オバマ大統領の8月31日のホワイトハウスでの会見以来、国際政治・外交の場はシリア問題一色となった。これは「オバマ・ショック」と呼んでもいいかもしれない。ここで重要なのはオバマ大統領がシリア攻撃への決意を表明したことではない。決意したと表明したにもかかわらず、議会の承認を求めたことであり、そして議会での承認の見通しが不透明なところである。議会が否決した場合、米国の大統領の示した「レッドライン」が破られてもなお、大統領が予告した制裁措置をとることができないかもしれない。それどころか制裁を加える意志が、本当のところ大統領、あるいは米議会や米国社会には存在しないか、あっても極めて脆弱かもしれない、という観測を世界に呼び覚ましたのである。今回の米議会の決断や、オバマ政権が最終的に採用する政策がいかなるものであれ、米国の中東への影響力の後退を印象づけた瞬間として記憶されるのではないだろうか。それが実際に米国の中東における覇権の終焉に結びつくかはともかく、オバマが米議会と米国民に、中東への関与のあり方の再定義と再確認を求めたことは確かだからだ。

 米ウッドロー・ウィルソン国際学術センターで中東問題を論じる元外交官のアーロン・デービッド・ミラーは、オバマがシリア攻撃への説得力のある議論を展開した直後に、「劇的なピボットで、議会に承認を求めることを約束するという大きな賭けに出た」と記す。もちろんこれは、オバマ政権が多用して、その曖昧さやもたらし得る帰結をめぐって議論を呼んだ外交・安全保障概念である「アジアへのピボット」をあてこすった表現だろう。「こうしてオバマはキャメロン化するリスクを冒したのである」と皮肉屋のミラーは続ける。

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