「あきれた」「ふざけんじゃない」地元福島の漁業者からはそんな声も出たという。

 東京五輪招致を決めた国際オリンピック委員会(IOC)総会での安倍晋三首相のプレゼンテーションのことである。

「状況はコントロールされている」

「汚染水の影響は福島第一原発港湾の0.3平方キロ」

 安倍首相はそう発言したのだが、正確な表現でないことは誰の目にも明らかだった。安倍首相の出発前、そして帰国後も新しい問題が明るみに出ており、状況は決してコントロールなどできてはいないのだ。汚染水は山側の地下水でも検出されているし、港湾の外の太平洋にも漏れていて、「ブロックされている」なんて決して言えない。

 ただ現地では、首相のこうした言葉が、投票を前にしたIOC委員たちの最終的判断に影響を与えたことは否定できない。

   しかし、実は日本に投票したIOC委員たちは、総会開催前から既に東京への投票を決めていた。そのことは、竹田恆和東京招致委員会理事長がNHKテレビのインタビューで明らかにした事前の票読みが極めて正確だったことから裏付けられる。同理事長によると、第1回投票では40-45票、決選投票では60票程度と予測していたが、結果はそれぞれ42、60だった。

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