中国の石油貿易に異変が起きている。二〇〇四年に前年実績比三五%増加した石油輸入(原油と石油製品の合計=一億六千六十万トン)が、今年に入って前年同期比横ばいで推移。その一方で輸出は大幅に拡大したのだ。 中国の税関当局によると、今年一―五月の石油輸入は前年同期比一・二%減の六千五百五万トン。同じ期間の石油輸出は九百九万トンで、こちらは前年同期比三五%増。製品別に見ると特に軽油の輸出の伸びが顕著で、実に一三八%増を記録した。シンガポール、ベトナム、ミャンマー、北朝鮮などが主な輸出先と見られている。 奇妙なことに石油の需要自体は、今年に入っても依然として増加傾向が続いている。工業生産の拡大や自動車保有台数の増加などを背景に、一―三月の原油処理量(石油製品の消費量に相当)は前年同期比七・三%増と活発な消費を窺わせる。 需要が増える中で、輸入が抑制され輸出が伸びる状況になった結果、軽油などでは中国国内向けの供給不足も顕在化し始めた。その背景には、国内市場より高値が狙える海外向け販売を優先しようという国有石油会社の動きがある。「販売価格でしか卸しません」――。中国石油(ペトロチャイナ)と中国石油化工(シノペック)の二大国有石油大手は最近、自社系列以外のガソリンスタンド運営会社に対してこうした「売り渋り」を始めた。中国では政府がガソリンや軽油の価格を決定する。その目的としてはガソリンスタンドなど小売り部門での過当競争を防ぐと同時に、販売価格を国際価格よりも低く抑えて国内の物価上昇を押さえ込むことが挙げられる。しかし石油会社の立場に立てば、国内で販売するよりも輸出に回したほうが、より多くの利益を稼げるわけだ。

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