六月十六日、米銀大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)のルイス会長が北京で発表した「中国建設銀行の株式九%を三十億ドルで取得する」とのニュースは、欧米金融関係者たちの間で驚きをもって迎えられた。 米銀行業界の中でこそ資産規模で第二位を誇るバンカメだが、国際金融市場における存在感では米銀一位のシティグループや英HSBCなどに遅れを取ってきた観は否めない。その保守的なバンカメが中国市場で、外資系金融企業としてかつてない規模の巨額投資に踏み切ろうというのだ。 建設銀は中国の四大国有商銀の一角を占める。四大銀行に外資が出資するのは初のケースで、この建設銀への出資・提携をめぐっては、昨年来、欧米金融企業の間で激しい競争が繰り広げられてきた。シティもそこに名を連ねており、頭一つ抜け出して本格交渉を進めていると見られていた。 逆転劇の経緯をよく知るバンカメ関係者によれば、ルイス会長自ら率いるバンカメチームは、今年二月から三月にかけて大攻勢をかけたという。当時、建設銀は張恩照董事長が不正融資疑惑で辞任するというスキャンダルの真っ只中。出資・提携交渉のライバルたちが二の足を踏むのを横目で眺めつつ、バンカメは国家外貨管理局長だった郭樹清氏という有力者が新たにトップに迎えられたこのタイミングを、むしろ絶好の「買い場」と見た。スキャンダルの影響を別にすれば、建設銀は四大銀行ではもっとも健全な資産を抱えており、年内に香港市場に上場する予定。条件さえ整えば、ニューヨーク市場上場にも踏み切るとされている。

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