政争で垣間見えた「盗聴大国・台湾」の姿

執筆者:野嶋剛2013年9月22日

 今回、台湾で起きた馬英九総統と王金平立法院長との間の政治闘争で、馬英九は王金平の国民党の党籍剝奪にいったんは成功したかに見えたが、王金平が求めた国民党籍の地位保全の仮処分が台北地裁で認められ、今のところ「1勝1敗」という形で、馬英九・王金平抗争は膠着状態に陥っている。

 ただ、それとは別に、今回の問題の発端が王金平の電話に対する盗聴の内容であったことで、台湾における盗聴の実情が改めて問われることになった。意外かも知れないが、民主化が進んだとはいえ、台湾は世界でもトップレベルの「盗聴大国」なのである。

 台湾の監察委員が2012年4月にまとめた報告によると、過去6年間において、台湾における盗聴件数は5万8187件に達している。1年間でおよそ1万5000件あまりの盗聴が行なわれている計算だ。これは、国土も人口も何十倍も大きい米国の1年間の盗聴件数に匹敵する数字だというから驚かされる。

 台湾でこうした数字が公表されるのは、盗聴はすべて裁判所の許可を得たうえで合法的に行なわれている、という前提があるからだ。盗聴した事実はすべて当事者に告知することが法律では義務づけられている。いわゆる「盗聴票」という文書だ。しかし、この「盗聴票」が有名無実化していることは関係者なら誰もが知っている話である。

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