ブッシュを悩ませるカール・ローブの「露見」

執筆者:ウェイン・スレーター2005年9月号

上手の手から水が漏れたのか。痕跡を残さず政敵をつぶしてきた「大統領の右腕」が、大きな疑惑にさらされている。[テキサス州オースティン発]「ローブの刻印」――マイナス情報を流して政敵に打撃を与えるカール・ローブ(五四)のやり口は、一九九〇年代のテキサス政界でこう呼ばれていた。その特徴は、「攻撃する、ただし指紋を残さずに」というものだ。 このため、ブッシュ大統領の最側近であるローブ次席補佐官がCIA(米中央情報局)秘密工作員の身元を漏洩したとの疑惑が浮上した時も、彼を知る者はまたいつものパターンだと考えた。コラムニストに女性工作員バレリー・プレイムの実名を暴露させたのは、彼女の夫で、ブッシュ政権のイラク戦争を批判していたジョゼフ・ウィルソン元駐ガボン大使の信頼性に疑問を投げかけることが目的だった。いかにもローブが考えそうなことだ。 ところが、今回はこれまでとはいささか趣が違った。ローブが「指紋」を残したのだ。さらに、情報の漏洩が政争のためではなく、国家の安全保障を脅かすものだったことも、過去のケースとは大きく違った。 ブッシュ大統領はたとえ誰であろうと、CIA要員の名前を漏らす法律違反を犯した者がいれば解雇すると公言した。そして、連邦検察官はこの件を捜査するために特別大陪審を設置した。現時点では、ローブの行為が法律違反に当たるのかどうかはっきりしない(ローブの弁護士は違法行為はないと主張している)。ホワイトハウスは当初、漏洩にローブは関与していないとしていたが、大陪審の調査が終わるまではコメントしないという姿勢に転じている。

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