会員企業は千四百社。最強の外資系ロビイング団体は、アメリカ企業の利益拡大のため、緻密に圧力をかけ続ける。「まさか日本は外資系企業の活動を制限しないでしょうね」 六月十日夜、ロンドン。グレンイーグルズ・サミット(主要国首脳会議)に先だって谷垣禎一財務相と会談したジョン・スノー米財務長官は、中国の人民元に関連する議題を片付けてから、そうクギを刺した。 スノー長官が懸念を表明したのは、来年から施行される新会社法の八二一条。「疑似外国会社」と呼ばれる条項で、「海外のペーパーカンパニーの子会社は日本では法人格を認められない」という内容だ。課税逃れが目的の偽装を取り締まるための法案だったが、まっとうな大手外資系企業のほとんどが税金対策上、日本支店をケイマン諸島やバージンアイランドなどに設立したペーパーカンパニーの子会社にしているため、「違法営業とみなされ、日本から締め出される」と危機感を強めた。しかし、現実にそぐわない法案はこの“瑕疵”を指摘されることなく、五月十七日に衆議院を通過した。 スノー発言の“仕掛け人”は、東京・港区にある在日米国商工会議所(ACCJ)だった。会員企業である証券会社などが五月上旬に“瑕疵”に気づき、ACCJを通じて在日米国大使館に通報。大使館はすぐに米本国の財務省に「優先課題」として報告したという。ACCJのメンバーは、その後も与野党の参議院議員に問題解決を要請し続け、六月二十九日の参院本会議で「特定の外国企業の活動を制限する趣旨ではない」という付帯決議を加えさせることで事実上の法文修正に成功した。

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