インド経済「回復の兆し」は本物か

執筆者:緒方麻也2013年10月8日

 低迷が続くインド経済に、またも何度目かの「回復の兆し」が見え始めている。国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストとして2008年の世界金融危機を予言したラグラム・ラジャン前シカゴ大教授(50)が鳴り物入りでインド中央銀行(RBI)総裁に就任して1カ月余、耐久消費財の販売不振や輸出、対印海外投資の低迷に直面していたインド経済は、いまだに油断できない状況とはいえようやく一息ついた格好だ。ガソリンや乗用車、家電などの相次ぐ値上げや失業など、様々なパニックをもたらした歴史的な通貨ルピー安もひとまず一服。ご祝儀相場というわけではないだろうが株価も安定し、9月中旬にはボンベイ証券取引所(BSE)の平均株価指数SENSEX30がほぼ3年ぶりに2万500を突破した。

 7億人強が従事する農業部門では、6-9月の雨季に十分な降水量があったため、近年にない大豊作が見込まれている。農業がGDPに占める比重は13%程度なので経済全体を大きく浮揚させる力はないが、政府の農産物買い上げ価格の引き上げとも相まって農村部での消費増につながり、少なからぬ底上げが期待できそうだ。伸び悩んでいた対印直接投資(FDI)も1―6月累計で前年比6%増と回復傾向が出てきた。1991年の経済危機の時と違って、外貨準備もまだ2700億ドル超と問題のない水準にある。そして米連邦準備制度理事会(FRB)が量的金融緩和(QE3)縮小の先送りを決めたのも、インドのような新興国にとっては実に幸運だったと言えるだろう。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。