主力車種「ゴルフ」の販売が伸び悩んだり、北米事業で十二億ドルもの赤字を出したりと、昨年から不調が喧伝される欧州の自動車最大手、フォルクスワーゲン(VW)。ここへ来てアジア展開にも綻びが見えている。 七月にはインド進出をめぐるスキャンダルが発覚した。傘下のシュコダによる現地での生産・販売が好調なことから、VWは新工場の建設を計画。インド南部のアンドラプラデシュ州と覚書を取り交わしたところで、VW側に不正疑惑が出来した。 シュコダ取締役が現地にトンネル会社を設立し、そこに州政府の出資金の一部、一億一千万ルピー(約三億円)が振り込まれていたというのだ。当の取締役は解任されてドイツ当局の調べを受けているほか、VW本体の担当取締役も辞任。インド側でも州の産業相が更迭され、中央政府が州関係者の関与などについて捜査に乗り出している。 VW側は社としての不正へのかかわりは否定しつつも管理責任を認め、元駐印ドイツ大使を州政府とインド政府に送るなどして善後策を協議しているものの、工場建設計画はストップしたまま。「中国事業で有効だった裏取引をインドに持ち込んで失敗したのでは」との推測も出ているが、VWは地元ニーダーザクセン州政府が大株主の公的性格の強い企業。それだけにインドでの不正は同社の実直なイメージを裏切る形となっている。

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