七月七日のロンドンでの同時爆破テロ事件を受けて、ブレア政権はテロ対策強化の諸施策を打ち出している。七月十八日には労働党政権と野党の保守・自民両党との間に新たなテロ対策法案の内容で合意が成立し、八月五日にブレア首相はイギリスを政治亡命の場としてきた外国人説教師とその団体に対する厳格な措置を発表した。ブレア首相は記者会見で「ゲームのルールは変わった」と告げ、憎悪を煽る外国人説教師の本国送還を行なっていくと宣言した。 会見では、イスラーム主義組織「イスラーム解放党」やその分派「ムハージルーン」が名指しされた。ムハージルーンの指導者オマル・バクリーは直後にレバノンに出国し、内務省は再入国を認めない方針を明らかにしている。八月十一日にはアブー・カターダをはじめとする主要な過激派指導者十人の拘束が行なわれた。 打ち出された個別の対策は、イギリスの対移民政策の基本的な理念の次元における大きな変化を示唆している。変化の根底には、イギリスのホスト社会とムスリム移民コミュニティの間の長期間にわたる緊張と、それを解決しようとする試行錯誤の結果としてホスト社会の側に広範に共有されるに至った、ムスリム移民コミュニティに対するきわめて「冷めた」認識が窺われる。それゆえに、今まさに生じている政策の変化は長期的な意味を持つ。

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