フィリピンの反アロヨ・デモ家族総動員の理由

執筆者:竹田いさみ2005年9月号

 朝目覚めて、ホテルの窓から目抜き通りを見下ろすと、不思議なことに見慣れた交通渋滞がなく、道路から車が消えている。フィリピンの首都マニラのビジネス地区マカティ。交通渋滞がないのは、アロヨ大統領に退陣を求めるデモ隊が大規模集会を行なうためだ。マニラ市が早朝から車両規制をかけて、反アロヨ陣営に首都圏を開放したのである。その数三万人。デモ隊を運ぶ貸し切りバスや小型バスのジプニーだけが、続々と集まってくる。 デモ隊に近寄ってみると、デモの性格がよくわかる。反アロヨ運動には、多数の団体がマニラ市内を中心に動員されており、それもフィリピンらしく家族単位での参加が多い。廃車寸前にしか見えない貸し切りバスの中を覗き込むと、幼稚園児から高齢者まで、デモ参加者の家族ですし詰め状態。集会の一時間以上も前から集まってくる。普段は交通渋滞を口実に、悪びれもせず待ち合わせに遅れてくるフィリピン人が多いのに、デモ参加は几帳面だ。いったい何故であろうか。 参加することが、生活に直結するからだ。お揃いのTシャツを着て、反アロヨの帽子をかぶり、右手には反アロヨのプラカードを握り締め、左手にはカキ氷が入ったビニール袋をぶら下げている。お昼には弁当が配られ、ソフトドリンクも振舞われる。これらのデモ必需品に加えて、参加費が支給されるのだ。

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