前月号で小泉圧勝を予測した身としても、自民・公明の与党で全議席の三分の二を超す今回の総選挙の結果には戦慄せざるを得ない。大きく開いた与野党の議席差ほど世の中の小泉改革に対する態度が果たして一方に偏っているだろうか。岡田克也民主党代表が、仮にほかの人物、鳩山由紀夫氏や菅直人氏、とりわけ経験も豊富で豪腕でなる小沢一郎氏だったら違った結果になっていただろうか。  おそらくだれが民主党党首であっても同じ結果だったのだろう。各地を歩いてみて、自民党への追い風は想像以上だった。そして自民党が獲得した議席数は、これまたその想像をさえも大きく上回っている。これほどの差がついたのは、やはり小選挙区制の特性が影響している。一人しか当選しない小選挙区では二位以下の票は死に票になってしまう。その傾向が全国規模で起こると、ランドスライド(地滑り)になりがちだ。  思い起こせばカナダで小選挙区制による驚愕すべきランドスライドの例がある。一九九三年十月、キャンベル首相率いる与党が過半数の一五四議席からわずか二議席に転落した。世界的にみても今回の選挙結果はそれに次ぐほどのランドスライドである。  世論調査でどちらかが圧勝というような結果が公表されると、投票行動を変更する有権者が出てくるというのがこれまでの常識であった。バッファープレーヤーと呼ばれる知的水準の高い管理職層がバランス感覚から劣勢とされる政党に投票する傾向がある。今回はそうした傾向は見られず、むしろバッファープレーヤーが「小泉自民党を圧勝させ、一気に改革を促進させよう」と判断し、一斉に自民党に投票したのではないかと思われる。そのことが都市部での自民党圧勝につながったのであろう。

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