今は一介の弁護士となったガルソン氏 (C)Fvmphoto for FIBGAR
今は一介の弁護士となったガルソン氏 (C)Fvmphoto for FIBGAR

 日本での犯罪は日本で裁かれるが、例えば米国での犯罪は米国で裁かれる。それぞれの国が国内の裁判管轄権を持つからで、国家主権と司法が密接に結びついている現代では、当たり前のように見える。

 しかし、ある国での犯罪が別の国で裁かれることも、ないわけではない。その条件や法理論は複雑だが、わかりやすい例が、ジェノサイドや、人道に対する罪の場合だ。

 これらの犯罪は国際秩序を脅かす性格を持ち、その影響は一国のうちにとどまらない。だから、犯罪者が処罰を免れてはいけないのだが、往々にして権力者自身や国家機関が手を染めており、その国の法制度で対応するには限界がある。だから、別の国家が、捜査や訴追に乗り出さなければならない――。このような考え方を、国家に縛られない管轄権であることから「普遍的管轄権」と呼ぶ。

 欧米諸国の多くは、強弱の差があれ「普遍的管轄権」の要素を含んだ法制度を備えてきた。中でも明確なのが、スペインで1985年に制定され、2005年に適用が拡大された「司法権組織法」だ。ジェノサイドやテロ行為などを挙げて「スペイン国外での犯罪に対してスペインは管轄権を有する」と明言した。

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