ついに「連邦制」に着手した胡錦濤の危機感

執筆者:藤田洋毅2005年10月号

「このままでは、格差が固定化される」。地域間のあまりにも大きな差を憂慮した胡は、あるプロジェクトチームを始動させた。 中国・中南海でいま、物故した二人の指導者の誕生日が話題になっている。 一人は、一九八九年四月に死去し天安門事件の“導火線”ともなった胡耀邦総書記。複数の消息筋によると、胡錦濤総書記は胡耀邦生誕九十周年にあたる十一月二十日、人民大会堂で盛大な記念式典を催す方向で最終的な党内調整に入った。トウ小平に批判されて失脚した胡耀邦にかかわる公式行事は、八九年四月二十二日の追悼大会以来初めて。胡錦濤を支える最大の権力基盤である共産主義青年団(共青団)の大先輩であり、自分を育ててくれた大恩人でもある胡元総書記に誠を捧げるためばかりではない。胡錦濤は、トウの生産力至上主義がもたらした深刻な改革の歪みや行き詰まりにメスを入れようとしている。トウの手法をなぞるだけで問題拡大を放置してきた江沢民前党中央軍事委員会主席(前総書記)の影響力を駆逐する狙いもあるのだ。 人民大会堂での記念式典の詳細は不明だが、巨大な胡耀邦の写真を背に雛壇には政治局常務委員九人が全員そろうのはほぼ間違いないと党中央の幹部らはいう。式典のほかに、(1)公式発言や論文を集めた「胡耀邦文選」出版(2)元秘書らが綴った「胡耀邦伝」出版(3)故郷の湖南省瀏陽市は生家を改修し展示館を建設(4)若き日の思い出の場所で、墓苑がある江西省共青城で没後初の公式記念活動を展開――なども準備している。党中央は胡未亡人の李昭や長男の胡徳平・党中央統一戦線工作部副部長、元秘書らと詳細を詰めているという。

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