見事な活性化を果たした瀬戸内の小島

執筆者:喜文康隆2005年10月号

「イノベーションとは経済的組織に限定されるものではない」(P. F. ドラッカー『イノベーションと企業家精神』)     * 香川県香川郡直島町――高松市の北方十三キロ、岡山県玉野市の南方三キロに位置する人口三千五百人あまりの小さな島、直島をご存じだろうか。 七月二十四日、直島町に「007『赤い刺青の男』記念館」がオープンした。007と瀬戸内海? 奇妙な結びつきの種を明かせば、小説「007」シリーズ『赤い刺青の男』の映画化機運を盛り上げようという試みである。記念式典には米国から原作者のレイモンド・ベンスンが駆けつけたほか、真鍋武紀香川県知事、浜田孝夫直島町長、福武總一郎福武文化振興財団理事長らが出席した。『赤い……』の筋立ては、ジェームズ・ボンドが英国首相の護衛として再び日本を訪れ、サミット開催地「直島」を舞台に極右勢力と闘うというもの。映画化された場合のロケ地候補として、直島のイメージアップを図りたいと地元が動きだしたのは三年前だという。 そもそも、願い通りこの作品が映画化されるかは定かでない。ただ、二〇〇一年に取材のため来日していたベンスンが、「サミット開催地にぴったり」だと直島に惚れ込んだことは事実である。

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