高齢化の悪夢

執筆者:徳岡孝夫2013年11月5日

 今でもときどき夢に出る、おそろしい光景である。私はそれを、カリフォルニア州バーバンクの空港で見た。1970年代の後半だと思う。

 ロッキード事件の取材中で、私はロスの空港で車を借りてロッキード社に行き、当然のことながら責任者との面会を断られた。

 すでに日本の新聞、通信各社が行って断られているから、驚くに足りない。それでも、やはりがっかりした。

 

 時差ボケがある。どこかでコーヒー1杯飲みたい。昼も過ぎているし、何か腹に入れたい。私は道路標識に出ていたバーバンク空港に車を入れた。空港ならコーヒーショップがあるはず。

 あったから入ってメニュを取り上げた。ウエートレスが来た。注文をして、ふと彼女の顔を見た。皺くちゃのお婆さんだった。

 見回すと、他のウエートレスもみな皺くちゃである。

 私は注文した品だけを見て食べ、勘定し、そそくさと店を出た。そのとき日本語が聞えた。旗を持つ添乗員に従うJALパックの列だった。短躯に眼鏡とネクタイ。肩から斜めにJALのバッグを掛けているオッサンたち。あれは3分ほどの間に私を襲った2発のショックだった。

 皺くちゃ、誇張ではない。老いた白人女性の皺は、日本のお婆さんよりずっと目立つのである。それが全員、10代の娘が着る制服を着て、そろいのエプロンをしている。怪談より怖かった。

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