三菱東京UFJ「水と油の統合作業」の停頓

執筆者:鷲尾香一2005年10月号

「システム」の統合は三カ月後に延期された。しかし、それよりさらに遠のきそうなのは「人」の融和だ。「旧三和」が強烈な巻き返しに――。「“刺した”のは、UFJらしい」 東京三菱銀行とUFJ銀行が、十月一日に予定していた合併を三カ月延期すると発表した八月十二日、関係者の間や金融庁周辺では、両行のコンピューターシステム統合の“不備”を金融庁に密告したのはUFJではないかという噂が囁かれていた。 金融庁は両行に対し、今年三月から六月にかけて執拗に立ち入り検査を行ない、システム統合の準備不足を指摘していた。検査時期が郵政民営化法案の成立が危ぶまれはじめた時期に符合し、参議院で郵政法案が否決され、衆議院解散・総選挙となった後に合併延期が発表されたことで、「決して選挙に強いとはいえない伊藤達也金融担当大臣が、選挙に向けた実績作りのために、統合延期に追い込んだのではないか」との穿ちすぎた憶測まで飛び交った。 今回のシステム統合は、両行の基幹システムは手をつけずに残し、その間に別々のシステムをつなぐコンピューターを挟みこむ「ブリッジシステム」を選択した。ただ、二〇〇二年にみずほフィナンシャルグループが誕生した際、大規模なシステム障害をひき起こしたこともあり、金融庁は神経を尖らせていた。万が一、東京三菱とUFJでシステム障害が発生すれば、監督官庁が非難にさらされるのは明らかだからだ。

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