フクイチからは作業員も逃げ出しているという (C)時事
フクイチからは作業員も逃げ出しているという (C)時事

「国が前面に」という安倍晋三首相の号令一下、東京電力福島第1原子力発電所(フクイチ)の汚染水処理対策事業が動き始めたように見える。2020年の五輪開催地を決めるアルゼンチン・ブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会(IOC)総会を4日後に控えた9月3日、政府は汚染水処理対策に総額470億円の財政出動を決めた。具体的には地下水を遮断するための「凍土壁」に320億円、放射性物質除去装置の増設に150億円を投入する計画で、10月上旬に事業者の選定も終えた。

 ただ、仏作って魂入れず――。カネは出しても、汚染水対策を含めフクイチの廃炉に立ち向かうリーダーは不在のまま。士気の低下が著しい東電の組織崩壊にも歯止めがかけられない。

「首相の『国が前面に』発言以降、汚染水対策を決めるのが東電なのか、エネ庁(経済産業省資源エネルギー庁)なのか、規制委(原子力規制委員会)なのか。現場の指揮系統がますます混乱している」

 とフクイチ支援に携わる大手重電メーカーの幹部は危機感を募らす。

 

山積する難題

「汚染水は完全にコントロールされている」と世界に向かって大ボラを吹いた安倍発言も奏功したのか、IOC総会で悲願の東京五輪開催が決定。その4日後の9月11日、政府は汚染水処理への新たな取り組みとして、「凍土方式による遮水壁(凍土壁)の設置事業」と「高性能多核種除去設備の実証事業」を手がける事業者を、それぞれコンペ方式で公募(つまり事実上の入札を実施)すると発表した。同24日に応募を締め切り、選考の結果、10月9日に凍土壁の事業者を、翌10日に除去設備の事業者を相次ぎ発表した。

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