「欧州でいちばん大きな病人」ドイツの混沌

執筆者:佐瀬昌盛2005年11月号

ドイツの総選挙は二大政党の「負けくらべ」だった。だが、勝ち負けだけを見ていては、この大国の真の“病巣”はわからない。 総選挙実施から三週間、ドイツでやっとメルケル新首相の下、大連立政権が発足する運びとなった。 シュレーダー首相によるドイツ連邦衆議院の解散とわが国の小泉首相の衆議院解散とは、あるところまでは《他人の空似》だった。郵政民営化法案を参議院で拒否されると、小泉首相は衆議院を解散した。ドイツの連邦参議院は十六州の州政府代表によって構成されるが、今年五月のノルトライン・ウェストファーレン州議会選挙でSPD(ドイツ社会民主党)が大敗し、連邦参議院で野党の圧倒的優勢が一層強まると、シュレーダー首相は強引に衆議院解散に漕ぎつけた。彼我ともにその手法は物議を醸した。たとえ衆議院選で勝っても、解散なき参議院での反対派優勢は変らないではないか、というのだった。ただ、《空似》はそこまで。 日本では小泉自民党が総選挙で地滑り的大勝を博し、参議院の抵抗勢力が恭順に転じた。九月十八日のドイツ総選挙では混沌状態が生まれ、参議院どころか衆議院そのものの機能が怪しくなった。衆議院の過半数による連邦首相の選出が必要なのに、過半数形成のための連立の組合わせがそもそも決まらなかった。総選挙前、一方でシュレーダー首相がSPDと「緑」の連立継続に一縷の望みを托し、他方で野党CDU/CSU(キリスト教民主/社会同盟)の首相候補メルケル女史がFDP(自由民主党)との連立政権を呼号したのに、どちらもが過半数に届かなかったからだ。では三党連立? それとも二大政党の大連立? ひょっとして連立少数政権?

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