本誌十月号(九月中旬刊)で、中国に行政区画見直しの動きがあると報じた(藤田洋毅「ついに『連邦制』に着手した胡錦濤の危機感」)。河北・河南・山西・陝西の四省を合併して新たな直轄市を作る案などまで視野に入れた大胆な「区画再画定」について、胡総書記じきじきの指示のもとに、プロジェクトチームが検討を始めたという内容だった。 この情報に呼応するかのような報道が、香港で相前後して流れた。まず八月末、『大公報』が中国国務院(政府)発展研究センター研究員の話として、「第十一期五カ年計画(二〇〇六―一〇年)期間中に行政区画を調整する方針」があると伝え、おもに省や自治区内で多層構造になりすぎている行政レベルを簡素化する改革案を報道した。さらに九月十九日、『文匯報』が、国務院民政省の匿名幹部の談話をもとに、同五カ年計画は省・自治区・直轄市という一級行政区の統廃合まで打ち出す可能性があるとの記事を掲載。フェニックステレビなどもその内容を詳細に伝え、連邦制への第一歩となる「大行政区制度」構想が明らかになった。 中国共産党中央は、反発の予想される微妙な改革案を正式に打ち出す前に、しばしば“北京直轄”の香港メディアを使って「試探知球(観測気球)」を上げ、反応を探る。前述の一連の香港報道は、「様々な利害が錯綜し専門家の論争も終わっていない」としながら、一方で「省区画の縮小、行政レベル簡素化が理想」との幹部の発言も紹介、指導部の意向を滲ませたものだった。

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