各国で人気を集める米アップルコンピュータの携帯音楽プレーヤー「iPod」。新製品の「ナノ」が発表されると、日本のハードディスク駆動装置(HDD)メーカー各社は悲鳴を上げた。「ナノ」には記憶媒体としてHDDではなく、韓国サムスン製の半導体メモリーが独占採用されたからだ。 特に日立製作所は、重電に代わる主力と位置づける情報通信部門の柱としてHDD事業の強化を目指し、二〇〇二年末に二千五百億円を投じて米IBMから同事業部門を買収。子会社の日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)がHDD事業を担い、「iPodミニ」向けにも多くの小型HDDを納めていた。 ところが「ナノ」の登場で「ミニ」は製造が終了。それでなくとも競争が激化しているHDD市場は単価の下落が続き、日立GSTは今期も三百億円の赤字を見込んでいる。ある大手証券アナリストは、「今後は受注も大幅に減る懸念が出てきた」と日立のHDD事業そのものの先行きを危ぶむ。 やはりHDD事業の比率が高いTDKの株価も下落するなど、「ナノ・ショック」は日立以外のHDDメーカーも揺さぶっている。業界の一部には「HDDは今後、携帯電話などでの用途もある」(日立幹部)との楽観論もあるが、携帯電話メーカーの価格要求も厳しく、採算ラインに乗せるには難しいとの見方が大半だ。

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