靖国大阪高裁判決の意味

執筆者:2005年11月号

 靖国神社は東京都認可の宗教法人である。その宗教法人の礼拝施設である本殿へ内閣総理大臣が参拝するのは、あきらかに憲法二〇条第三項、「国は宗教的活動をしてはならない」に違反している。このところの靖国をめぐる議論は、中国や韓国が反対していることもあって、東条英機らA級戦犯合祀ばかり問題になっているが、本来は政治と宗教の分離を定めた憲法問題なのである。 本来あるべき議論に戻したという意味でも大阪高等裁判所の判決は意義深い。このところ腰を引いたような憲法判断を避ける判決ばかりが目立っていた。この判決が小泉純一郎首相の今後の参拝をめぐる国内外の論議をさらに拡大させることは間違いない。判決は「参拝は内閣総理大臣の職務にあたり、憲法の禁止する宗教行為」とした上で(1)公用車を使い、秘書官を伴っている(2)「内閣総理大臣」と記帳している(3)就任前の公約である、と理由を述べた。「宗教団体の靖国神社の礼拝施設である本殿で、祭神に対し拝礼することにより畏敬崇拝の気持ちを表したもので極めて宗教的意義の深い行為」と断じている。判決がユニークなのは参拝の政治的側面を指摘している点である。「小泉首相は三度にわたって参拝した上、一年に一度参拝を行う意志を表明し、国内外の強い批判にもかかわらず継続しているように、参拝実施の意図は強固だった」と述べている。

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