日本サッカーの新時代

執筆者:星野 智幸2013年11月25日

 11月19日に行なわれたベルギーとの親善試合、悪童・柿谷曜一朗の復活は前半36分のことだった。

 右サイドで起点となったのは、ボランチの山口螢。タッチライン際の酒井宏樹にショートパスを出すと、前線へ走り出す。ボールを受けた酒井は、その少し前方にいる本田圭佑にパスを送ると、やはり前方へ走り出す。本田の前には、山口と酒井の2つのパスコースが開いたのだった。ベルギーの守備陣が、先に走り出していた山口に意識が行った瞬間、本田は酒井にスルーパス。フリーで受けた酒井が持ち味の絶妙なクロスを上げると、センターバック2人の間に割って入った柿谷が、体をたわめてジャンプし、空中で亀のような姿勢をとってヘディング! バネをたわめすぎて、この勢いで打ったらボールは枠を逸れかねない、というところで、柿谷はバネがききすぎないよう、瞬時に体をコントロールし、完璧な弾道のゴールを決める。苦手だといわれるヘディングでの同点弾だった。

 なぜ柿谷はヘディングが苦手なのだろうか。ヘディングをしない選手というと、イブラヒモヴィッチとジダンがすぐに思い浮かぶ。彼らはどんなボールが来ても足と体でコントロールしてシュートを打てるので、ヘディングの必要が少ないのだろう。そのジダンがヘディング2発でフランスの優勝を決めたのが、1998年W杯の決勝だった。柿谷も、これらの超人の系譜だと思うのである。

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