中国政府は来年にも郵政事業から金融部門を切り離し、「郵政貯蓄銀行」を作る。だが、これは日本のように「官から民へ」の流れが背景にあるわけではない。 中国の郵貯制度は二〇〇三年まで、郵便局が貯金を集め、そのまま中国人民銀行(中央銀行)に預ければ市場より高い利子がついて利ざやを稼げる仕組みだった。郵便局はその利益で郵便事業の損を埋め、全体として帳尻を合わせていた。現在は新たに集めた分の貯金は自主運用にまわされるが、二〇〇三年以前の貯金は大部分が変わらず人民銀行に預けられている。 本来、金融部門の分離は人民銀行の負担を減らし、郵便の経営努力を促すのが狙い。この構想自体は前からあり、人民銀行は一九九七年の中央経済工作会議に原案を出していた。その二年後には国務院(政府)が同意したとされるが、結局はお蔵入りになっていた。 だが、国務院も今回は本気のようだ。七月二十日の常務会議で「郵政体制改革方案」を決定。これを受け八月二十六日に全国の郵政局長に対し、郵便事業を担う中国郵政集団と、貯金事業を営む郵政貯蓄銀行の設立を柱とする改革案が説明された。 国務院の態度の変化の背景に窺えるのは温家宝首相の姿だ。二〇〇三年三月に首相に就いた温氏は発展から取り残された農村問題の解決を政権の最優先課題に掲げて、農業税の廃止などの手を打った。次は農村金融の再構築に着手すると見る向きは多い。

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