インド農業の大豊作で景況回復に高まる期待

執筆者:緒方麻也2013年11月29日

 総人口12億3000万人の約6割、7億人余が従事するインドの農業セクターで、大豊作の期待が高まっている。油糧種子や豆類、綿花など雨季作(カリフ)の収穫を大きく左右する6-9月のモンスーン(季節風)が十分な降水量をもたらしたことが要因だ。政府機関である農業費用価格委員会(CACP)のレポートによると、この豊作で13年度の農家の名目所得は平均で前年度比15%も上昇する見通し。これが家電や二輪車、FMCG(日用品)、携帯電話などの購買・消費増につながれば、巨大な農村人口を背景にインド経済へ大きな波及効果をもたらす可能性がある。

 有力英字誌タイムズ・オブ・インディア紙によると、同レポートの作成責任者であるアショク・グラティ委員長は「農業セクターの成長率は前年比3倍に拡大する」としており、年率で5.2-5.7%という近年にない高成長が見込まれるという。2011年度の農業部門の成長率は前年度比3.6%、12年度に至っては同1.9%に落ち込んでいただけに、大きな飛躍だ。

 CACPによると、とりわけ豊作の恩恵が大きいのはインド中部や南部など、灌漑設備の普及が遅れた農業後進地域で、大きな底上げが期待できるという。14年春に総選挙を控えた人気取りもあって、政府は農産物買い上げ価格(MSP)を相次ぎ引き上げており、農村部の所得をさらに押し上げそうだ。

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