北朝鮮を増長させた六カ国協議「共同声明」

執筆者:武貞秀士2005年11月号

初めての共同声明が出されたものの、内実は北朝鮮の勝手な解釈を許す曖昧なもの。日本にとって最悪の展開すら考えられる。 九月十九日、北朝鮮の核問題をめぐる第四回六カ国協議が終わり、共同声明が発表された。協議が二〇〇三年八月に始まって以来、初めて出された共同声明である。この中で北朝鮮は、「すべての核兵器と核計画の放棄」を約束した。それに対し各国は、軽水炉型原発の提供を適当な時期に議論すること、北朝鮮と米国が関係正常化を徐々に実現すること、米国は核と通常兵器による攻撃をしないことを確認した。 だが、北朝鮮核問題の解決が軌道に乗ったかにみえた翌日、「まずは核の放棄から」という米国に対し、北朝鮮は「軽水炉供給が先だ」と主張。早くも両者の言い分に食い違いがでている。今後、「北が核を放棄したと判断する基準」をめぐっても紛糾が予想される。しかも、北朝鮮が一度は認めながら後に否定に転じた「高濃縮ウラン型核兵器」開発の有無も不明のままである。 いったい何をもって北が核を放棄したと判断するのか、誰がどう検証するのか――これについて各国の見解が一致しなければ、失敗に終わった一九九四年十月の米朝枠組み合意と同じ結果となってしまう。はたして共同声明のポイントは何なのか。子細に検討すると、北朝鮮の真意が見えてくる。

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