偶発衝突の恐れもある「東シナ海」日中のズレ

執筆者:藤田洋毅2005年11月号

日本に組織的挑発などできるわけがないのに、中国側にはそう映るらしい。ガス田問題が領土・領海問題にからみ、東シナ海の波は高い。《尖閣諸島の魚釣島に中国の若者グループが上陸、日本政府は入管難民法違反で逮捕すべく沖縄県警を急派する。同じころ、東シナ海の日中中間線付近に出動した海上保安庁の巡視船を中国の漁船数百隻が取り囲み、若者グループへの支持を訴えるとともに日本側のガス田試掘の停止を要求し作業を妨害した。日本外務省はただちに駐日中国大使を呼び抗議。一方の中国大使も漁船団への実力行使や若者グループ逮捕に抗議すると強硬に主張する。大使館に帰った中国大使が交渉内容を北京の外務省本省に報告すると、驚愕すべき反応が返ってきた。「海空軍準備好了(海空軍はすでに準備ができている)」。漁船団と自国民を保護するため、海空軍が出動態勢を整えたというのだ》 近未来小説の一節と思われるかも知れないが、実は根拠のあるシナリオである。 二〇〇四年三月二十四日午前、活動家七人が大陸の中国人としては初めて魚釣島に上陸した、ほんの一年半前の事件を思い出してほしい。当時の主な経過は――。 二十四日夕、入管難民法違反の現行犯で全員を逮捕した沖縄県警をはじめ警察庁や法務省など関係部局は、通常の刑事手続きに沿って送検する方針を固めた。当夜、警察庁幹部は「一罰百戒。今後、同じような事態を招かないためにも法の許す限りの厳罰で臨む」と筆者に言明、島の祠を破壊した器物破損容疑を問うと説明した。警察庁の方針を受け、沖縄県警幹部も翌二十五日午後、自信満々に「二十六日午後に送検する方針」を報道陣に確認したのである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。