生涯を自由と人間の尊厳のための戦いに捧げ、1989年のビロード革命を指導した故ハベル・チェコ大統領もさぞ草葉の陰で嘆いているのではないか。

 ハベル氏と親交を結んでいた南アフリカ共和国の反アパルトヘイトの闘士マンデラ元大統領が死去し、世界中が哀悼の意をささげる中、チェコのルシュノク首相が議会内で閣僚と私語を交わし、「(マンデラ氏の)葬儀なんぞ行きたくない」と吐き捨てた発言が漏れたのだ。詳しく言うと、漏れたというよりも、首相の肉声は気づかないままオンになっていた議場のマイクに拾われ、公共テレビでも放送されてしまった。「葬儀に行くと考えただけで身の毛がよだつ。南アの遠さときたら地獄の沙汰だ」「あんなところには大統領が行けばいいのさ。でも無理だろうから結局、おれがやられてしまうわけか」――などなど、公の場では許されない4文字言葉も交え、マンデラ氏への敬意の片鱗すら感じさせない乱暴な言葉遣いだった。結局、騒ぎを引き取る形でコホウト外相が葬儀に参列したが、ビロード革命から約4半世紀を経たチェコ政治指導層の「劣化」を印象付ける一場面だったと言える。

 

チェコ版ベルルスコーニ

 もう1つ、故ハベル氏の感想を聞いてみたい出来事が起きている。次期政権樹立に向けた連立交渉は今大詰めを迎えているが、社会主義時代のチェコスロバキアで秘密警察の協力者だった疑いのある大富豪が政権のキーパーソンの位置を占めたことだ。

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