温顔の策士「宮内義彦」の実像と虚像

執筆者:杜耕次2005年12月号

オーナーでも創業者でもないのに、長年トップに君臨し、規制緩和のシンボルともなった財界人。いま世の中を動かす不思議な「主役」に迫る。 オリックス会長、宮内義彦(七〇)ほど、素顔のわかりにくい経営者はいない。四半世紀も上場企業のトップを務め、財界活動は厭わず、総理の諮問機関である規制改革・民間開放推進会議の議長職もこなし、そしてプロ野球球団のオーナーでもある。ソフトバンク社長の孫正義(四八)に師と仰がれ、今や「時代の寵児」となった村上世彰(四六)を世に送り出した陰の仕掛け人でもある。 オリックスは銀行・ノンバンクが生死の境を彷徨ったポストバブルの「失われた十年」を大過なく乗り越えた。金融債の発行体格付けは「A+」(R&I=格付投資情報センター)を維持。直近の業績も上々で、二〇〇六年三月期の連結純利益は三期連続で最高益を更新する見通しだ。 プライベートでの宮内は財界文芸誌の同人に名を連ね、スポーツでは野球やテニスで腕を振るう。百七十八センチの長身痩躯でルックスも申し分ない。 ことほど左様にケチのつけようがない条件がそろっているにもかかわらず、実は宮内は不思議なほど“人気”がない。マスコミ関係者や財界人は彼と彼の会社に距離を置きたがる。そればかりか、中には悪し様に批判する向きもある。読売新聞グループ本社会長の渡辺恒雄(七九)などはその典型だ。

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