「幻影国家=中央アフリカ」の危機と日本

執筆者:白戸圭一2013年12月22日

 昨年(2012年)10月、この「アフリカの部屋」で、イスラム主義武装勢力に占拠されたマリ北部がテロリズムの温床となり、北・西アフリカの広い範囲に対して安全保障上の脅威となる可能性を指摘した(「大統領選後のアメリカ外交の隠れた焦点~西アフリカへの軍事的関与」)。

 その3カ月後、その指摘は極めて不幸な形で的中してしまった。2013年1月、マリ北部を活動拠点としていたテロリストのモフタール・ベルモフタール(Mokhtar Belmokhtar)率いる武装集団が、アルジェリア南部イナメナスの天然ガス・プラントを襲撃し、日揮の従業員ら日本人10人を含む38人を殺害したのである。

 マリでクーデターが発生したのは2012年3月、権力の空白に乗じて武装勢力が同国北部の分離独立を宣言したのが同年4月である。この時、それから1年足らずで多数の日本国民が犠牲になる事件が起こることを予測した人は、多分いない。私自身、日本国民が多数犠牲になる事件の発生は想像もしなかった。アルジェリアの事件は、ともすれば中国と北朝鮮の軍事的脅威にばかり目を奪われがちな我々に、地球の反対側の国の平和と安定なくして日本国民の安全は守れない現実を改めて教えた。

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