1人っ子政策違反「張芸謀監督」の堕落と特権

執筆者:野嶋剛2013年12月24日

 中国の世界的な映画監督・張芸謀(チャン・イーモウ)氏が、中国の1人っ子政策に違反して複数の子供をもうけながら、何のおとがめも受けていなかった問題が、年末の中国を騒がせ続けている。浮かび上がるのは、1人の反骨精神を持った映画監督が、いつしか「国師」と呼ばれるまでに持ち上げられて特権階級になっていた実態だ。

 張氏といえば「紅いコーリャン」「秋菊の物語」「活きる」などの名作を残した中国を代表する映画監督であり、かつては上映禁止になるような作品も撮った批判精神あふれる映画人だった。しかし、有名になるにつれて作風は変わって大型娯楽作品中心となり、北京五輪の開会式で総合監督を務めるに至って中国政府との密接さは際立つようになった。

 その張氏は、最初の妻との間に長女がいるほか、現在の妻との間にも3子をもうけ、ほかにも複数の子供がいると報じられている。

 中国においては1人っ子政策によって2人以上の子供をつくると罰金を払わないと戸籍ももらえず、ほかにも出産に絡む様々な法令で縛って張氏のようなケースは基本的にあり得ないような制度になっている。

 張氏側は長く沈黙を守ってきたが、12月、「誠実なおわび」との声明を出し、「現在の妻との間に息子2人と娘1人がいる」ことだけは認めている。

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