架空の”格安払い下げ話”の舞台となった物件
架空の”格安払い下げ話”の舞台となった物件

 さる12月12日、東京地裁である詐欺事件の初公判が開かれた。被告は、元弁護士である本田洋司(80)ら3人。財務省などが所有する「国有地」を格安で購入できるという架空の話を捏造し、静岡県と福岡県の不動産業者らから合計約6億円を騙し取ったという事件である。余罪を含めると、被害総額は50億円を超えると見られている。

 最初の逮捕が10月3日(後に余罪で再々逮捕)だったこの事件は当時、詐欺の重要な役割を果たした本田被告が日本弁護士連合会の常務理事という法曹界の重鎮でもあったことから、新聞・テレビでも大きく報じられた。その一連の報道は、日弁連常務理事という大物の存在があったが故に成立した詐欺という、特異な事件としての扱いが大半だった。

 だが実は、この種の「国有地架空取引」詐欺はかなり以前から水面下で横行しており、事件化に至っていないケースを含めると、被害総額は「数千億円規模」(警視庁幹部)とも言われる。

 以下、詐欺の疑いが極めて濃厚な現在進行形の事例を、当事者らの証言によって検証してみる。

 

「20億円」が「7億円」に

 群馬県前橋市で農業関連の事業を手広く営むA氏のもとに、知人を介して「都心の国有地を格安で確実に買い取れる」という話が持ち込まれたのは、2012年8月頃だった。物件は、目黒区中央町2丁目の土地約647坪(2135.59平方メートル)で、所有者は「国家公務員共済組合連合会(KKR)」。その名の通り、国家公務員の年金・福祉事業のために特別法で設立された特殊法人である。いわば、その所有する土地は“準国有地”という扱いだ。土地には、日本郵政が所有する「目黒郵政宿舎」という建物が存在する。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。