憲法改正をめぐる「政界対立軸」の大変貌

執筆者:野嶋剛2006年1月号

いつの間にか、自民党内の考え方もガラリと変わっていた。新たな政界構図のなかで、改憲はどう論議されていくのか。「今日の憲法は一番大事なところを外しておる。だから私は怒った。あれは『第一次』草案で、いずれ『第二次』草案を作らないといけないんです」 十一月二十二日、東京・品川の新高輪プリンスホテル。自由民主党立党五十年を記念する党大会で、新憲法起草委員長を務めた森喜朗前首相が誇らしげに新憲法草案を読み上げた。立党五十年にして、初めての快挙。ところが、それを聞く改憲の大御所、中曽根康弘元首相の表情は深く曇っていた。同氏は早々に会場を後にし、その足で都内の別のホテルで開かれた憲法問題のシンポジウムに出席し、冒頭の痛烈な草案批判を吐き出した。 中曽根氏は草案の前文執筆を委任された。長年温めた改憲にかける思いを「美しい島々」「国を愛する国民の努力によって国を守る」「和を以て尊しとなす」などの文言に込めて文面を練り上げた。しかし、完成した草案でこうした文言はきれいに消されていた。起草委事務局次長の舛添要一参院議員は記者団にその理由を「情緒的なものは憲法にそぐわない」「憲法は個人の歴史観で書くべきではない」と語り、中曽根前文のエッセンスを真っ向から否定した。

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