穏やかな日が続いた新春の三が日、南米から飛び込んできたニュースは、新婚旅行でエクアドルのグアヤキルを訪れていた日本人夫婦が昨年12月28日に強盗の被害に遭ったというものだった。銃撃を受けて夫は死亡、新妻も重傷という。

 筆者は、多くの学生たちを南米諸国に留学に送り出している。新興国への1年間の留学を義務付けた高度グローバル人材育成プログラムを文部科学省の支援を受けて立ち上げたばかりでもある。エクアドルは含まれていないが、アジアはもとより南米のペルーやブラジルなど、成長著しい新興国を対象とした教育プログラムだ。新興国で働くための能力を高め、個人や企業の競争力を強化することこそが、日本の再生や若者たちの将来にとって喫緊の課題と考えて構想したものである。

 「内向き」といわれる若者たちだが、彼らに留学をためらわせるのは、「卒業が遅れる」「就職活動にとって不利だ」とする横並び的な制度だけではない。実は留学を決意するにあたってハードルを高くしているのが、親たちに対する説得である。こうした残念な事件が起こるたびに、「新興国は危ない」というイメージが親たちに刷り込まれ、さらにそのハードルを高くすることになりかねないのだ。

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