欧州に「異世代ホームシェア」が根づき始めた

執筆者:大野ゆり子2014年1月17日

 家族が巣立った後、部屋数に余裕がある1人暮らしのお年寄りと、家賃が高いために大学の近くに住むところが見つからない学生。この両者のニーズをうまくマッチングさせた「異世代ホームシェア」という新しい形態が、高齢化社会への対応を迫られるヨーロッパで着実に根を下ろし始めている。

 

「記録的猛暑」がきっかけ

 血のつながりのない高齢者と若者が1つ屋根の下に暮らすという、新しい共生の在り方が普及したのは、この10年ほどのことだ。きっかけは2003年に襲った記録的な猛暑。40度近い気温の日が3週間近く続き、特にフランスでは1万人以上の犠牲者を出し、その多くが1人で暮らすお年寄りだった。ヨーロッパの夏は比較的涼しく、冷房や扇風機が必要ではないために、多くの高齢者が熱中症になっても異変に気づかなかったという社会の死角が浮き彫りになった。

 一方、都会では家賃が高騰し、家賃の捻出のためにアルバイトに追われ、学業に専心できなかったり、親に経済的余裕がなく進学できない学生がいる。もしお年寄りが学生に住まいを提供して一緒に暮らせば、お年寄りが孤立することがなくなる。学生も相場よりはるかに安い家賃で生活でき、若者がお年寄りの知恵を学んだり、お年寄りが若者からコンピュータを習ったり、世代が違うからこそ学び合える交流も生まれてくる。こうして始まったホームシェアは、フランスとスペインで発展していき、今ではヨーロッパ13カ国に広がった。

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