東レが組成した「(北陸)合繊クラスター」の取材を通じて、繊維産業、特に川上といわれる紡績と川中といわれる紡織や染色業界の競争力を探っている。クラスターと呼ばれる集団に参加した企業が多く集まる福井や石川を取材していると、日本経済をリードしてきたかつての花形産業が構造改革に取り組む張りつめた雰囲気を実感できる。織物機がガチャッと一回動くたびに万札に化けたという「ガチャ万」の熱狂を伝えるのは、工場の大きさと、その片隅に残されている古い織物機だけである。 同時に、日本の繊維産業は、なにをもって「復権」と考えているのかという疑問が頭をもたげてくる。安い労働力を武器に世界を席巻する中国の繊維業界に完膚無きまで叩きのめされているように見えるが、生き残りをかけた復権への努力は続けられている。そこには当然、とりあえずのゴールの姿がイメージされているはずである。 結論を先に書いてしまえば、非常に楽観的になった。たしかに合成繊維を織ったり編んだりする「機屋」は最盛期の八分の一にまで減った。多くの機屋が復活したりすることはないだろう。チョップ(CHOP)といわれる大手紡績系列の下請け生産構造が復活するわけではないからだ。淘汰されたものが生き返ることはない。

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