ジビエ料理の季節が来て

執筆者:大野ゆり子2006年1月号

 空気が深々と冷え込みだすと、「ジビエ(Gibier)」の季節の到来である。ここのところ日本でもブームになり、専門店も増えているというジビエ料理。ヨーロッパでは、十月中旬ごろから翌年二月中ごろまで、山バト、キジ、マガモといった鳥類や、野ウサギ、シカ、イノシシなどの野生動物の狩猟が解禁になり、ジビエと総称されるこれら鳥獣の肉が「旬」の食材としてメニューに並ぶようになる。 ベルギーはフランスと並んで、実は知る人ぞ知る「ジビエ料理大国」。新米や新茶など初物を楽しむ習慣がある日本と違い、普段のこちらの食生活は、それほど季節に敏感でない。時差の関係で、「世界で一番早く日本で解禁」と話題だったボジョレ・ヌーボーも、解禁当日に親しいフランス人とベルギー人を家に招いて振舞ってみたが、反応は普通に素通り。気がつかなかったのかと思い「今年のボジョレなの」「初物なの」「今日解禁だったの」と畳み掛けてみたが、反応は変わらず。彼らにとっては、初物より普段飲めない「日本酒」の方が、人気が高かった。 しかし、ジビエという言葉にだけは、特別の響きがあるようだ。この時期になるとフランスやベルギーではマルシェと呼ばれる朝市で、野ウサギやキジなどを見かけるようになる。冬に備え、虫や木の実を食べて栄養を蓄えたジビエの肉は、身が引き締まっていながら柔らかく、ぴりっとした風味があるのが特徴。それでいて、余計な脂肪分は少ないという。

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