表現不自由の国イランで意外な「穴場」を発見

執筆者:竹田いさみ2006年1月号

「こんな洒落た場所があったのかー」と、建物に足を一歩踏み入れた瞬間、思わず口から言葉が出た。ここはイランの首都テヘラン市内の高台にあるカフェレストラン。二〇〇二年秋に「スポーツ・リクリエーション・コンプレックス」として開業したが、「看板に偽りあり」だ。たしかに一階にはビリヤードルームがある。しかし二階はテラスカフェ、三階もテラスレストランで、スポーツなどより明らかにカフェレストランが主体である。眺めのよい特等席に座ってコーヒーを啜りながら市内を見下ろすと、テヘランに居ることを忘れてしまう。 というのも、昨晩訪れたイラン料理の民族レストランと比較してしまったからだ。「イランの伝統料理と音楽を堪能して下さい」と、イラン人の知人に強く勧められて、地元で人気のあるレストランに足を運んでみた。たしかに、外国人観光客向けの“民族レストラン”ではなさそうだ。店内は中産階級のイラン人家族で満席状態。だが、食事にいっさい期待してはいけないという直感がはたらく。残念ながら的中してしまった。 メインコースは羊肉、チキン、魚からひとつを選び、サラダバー風のカウンターに並ぶ野菜は食べ放題。イラン人の知人は羊肉とチキンを注文し、筆者は魚にした。しばらくしたら、真っ黒焦げになった山盛りの串焼き料理が運ばれてきた。調理せず、そのまま素材を焼いたシンプルな料理。知人は「美味しい」を連発して平らげていたが、食文化の違いを痛感した瞬間だった。

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