「溶け始めた北極海」で繰り広げられる資源争奪戦

執筆者:シルヴィオ・ピエールサンティ2006年2月号

これぞ“二十一世紀のゴールドラッシュ”。地球温暖化によって「資源の宝庫」と化す北極海に、世界の国と企業が殺到している。[ローマ発]フィンランドの造船会社アカーは昨年、砕氷船専門の造船所を新設した。普通の海では舳先を前に進行し、氷の海では向きを変えて船尾で氷を砕きながら進む最新式の砕氷船に注文が殺到しているからだ。 また、長い間衰退する一方だった世界最北端の町、ノルウェーのハンメルフェストは、石油・ガス開発基地として俄に活況を呈し始めている。「職がなく若者が出て行く一方で、何十年も人口が減るばかりだったが、最近は若者が流入している」と同市のアルフ・ヤコブセン市長は語る。しかも、技能労働者や技術者はノルウェー国内からだけでなく、フィンランドやロシア、中央ヨーロッパ諸国、あるいはアジアの国々からも集まっている。 活況の元は、ノルウェー政府が七割を出資する石油会社スタトイルがバレンツ海で進めるLNG(液化天然ガス)事業「スノーヴィット」の拠点として、ハンメルフェスト沖のメルコヤ島にガス精製施設が建設されていることだ。これに関連して数千人分の新たな雇用が生まれている。「スノーヴィットは世界最大のLNG開発実験です」というのは、エネルギー・石油戦略を専門とするノルウェー科学技術大学のアルネ・ブレデセン教授だ。「二十五年前には、バレンツ海の石油や天然ガスは、そこにあっても一文の得にもならなかった。しかし、研究開発の結果、スノーヴィットのような開発プロジェクトが可能になったのです」。

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