「午年の地経学リスク」が日本を襲う

執筆者:青柳尚志2014年1月31日
 ダボス会議では安倍首相とも会談したソロス氏が不気味な指摘をしている(C)EPA=時事
ダボス会議では安倍首相とも会談したソロス氏が不気味な指摘をしている(C)EPA=時事

 年が明けて、全世界が突然の寒波と豪雪に見舞われたようだ。新興国通貨の急落と先進国をも飲み込む株安の連鎖。米金融緩和の幕引きに伴う新興国からのマネーの引き揚げに加え、いや応なく意識させられるのは中国の長い影である。

 第1次世界大戦当時、英独は多くの経済的な関係があったのにもかかわらず、大戦に至った歴史的経緯があった。このようなことにならないようにしなくてはいけない――。

 安倍晋三首相は1月22日、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、外国メディア関係者にそう述べた。第1次世界大戦に言及したことは、欧米とくに欧州のメディアを刺激した。さっそく、「首相が武力衝突は論外だと明言しなかった」(英紙『フィナンシャル・タイムズ』)、「首相は日中が1914年の英独に似ていると認識している」(英BBC放送)などと、第1報が流れた。

『フィナンシャル・タイムズ』は24日の社説でも、「日中の武力衝突のリスクを高めかねない」といった批判を加えている。安倍首相が「歴史を繰り返してはならない」と述べた結論部分を飛ばして、現状の危うさを指摘した部分だけを強調する。そんな取り上げ方は、誤報といわないまでも、均衡を失している。

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