中国国務院(行政府)は、中国初の自由貿易区を天津に設立する方針を決めた。 トヨタ自動車や米モトローラ、韓国サムスンなど有力外資がすでに立地している経済技術開発区や保税区を核とする「浜海新区」に大幅な自主権を与え、主に日本や韓国の企業を積極的に誘致する方針だ。天津市政府幹部は「北京や河北省、東北三省を後背地に抱える渤海経済圏のカナメです。南の上海・浦東地区に匹敵する、北東アジア最大の経済ハブを目指します」と強調している。 初の自由貿易区選定をめぐっては、複数の沿海都市が立候補。昨年秋口までに天津と広東省の経済特区・深センの二都市に絞りこまれており、最終決定が注目されていたが、昨年十月初め、胡錦濤総書記が天津入りし、浜海新区視察に「視察中で最長の時間を割いた」(前出の幹部)。 しかも、胡は視察途中の講話で、天津が国務院に提案した計画書をなぞるかのように「浜海新区は得がたい発展の機会を逃してはならない。渤海経済圏のみならず北東アジアに向かわなければならない」と発言。これで、天津有利が決定的になったとされる。 天津が深センを押さえ込んだ決め手のひとつは、中国人民銀行(中央銀行)前総裁である戴相龍・天津市長が「北東アジア開発銀行」設立を提案したことだという。戴市長は、かつてロスチャイルドなど各国の有力銀行が立ち並んでいた旧租界に「金融街」の整備を決めるなど、天津の金融センター化を強力に進めている。その念頭には日本が北朝鮮と国交を樹立した際に動く莫大なマネーがあることは間違いないと、市政府や国務院の幹部は明言する。

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