前回、結婚相手の男選びでは、ストックよりフローがはるかに重要だと解説した。これは結婚と離婚の法律に関する極めて当たり前の事実に基づいている。つまり結婚前に双方が持っていた財産は、結婚により影響を受けないのだ。

 婚姻費用は結婚したあとの所得により決まる。財産分与は結婚後に蓄えられた財産(=共有財産)を夫婦で分割することである。結婚と離婚で動く大きなお金はこのふたつであり、浮気が発覚した場合に支払わなければいけない慰謝料などは取るに足らない金額なのだ。もっとも、浮気は離婚が認められる不貞行為になるので、その点に関しては重要な意味を持つのであるが。

 しかし、中世ヨーロッパを舞台にする文学作品や映画、日本の時代劇などでは、結婚というのは家と家がくっつくものであり、そこでは家の資産や身分が男女の愛憎劇に大きな影響を与えている。そのせいか、結婚によって、もともとある相手の財産があたかも自分のものになるかのように錯覚し、玉の輿、あるいは逆玉ができるように思い込んでいる男女は多いのだが、それは間違いなのだ。

 現代の先進国の法律は、全ての人は法の下で平等であり、戦前に見られたような華族や貴族のような身分を完全に否定し禁止することで成り立っている。男女の性差別も当然のように禁止である。結婚というのは、あくまで個人と個人のものなのであり、近代国家の法律に「家」という概念は存在しない。

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