日本にとって遠い国、米国にとってはとても近い国、それがメキシコであろう。物理的な隔たりだけでなく、スペイン語圏でもあるメキシコは、ビジネスの対象として日本人の視野に入ってこないようである。米国企業には英語とスペイン語をバイリンガルにあやつる人がゴロゴロいるという現実に直面すると、日本人は米国でのビジネスに精通していながら、そのお隣の国にまでは決して食指を示そうとはしないものだと思わざるをえない。

 筆者は今年で米国滞在が18年になるが、カリフォルニアに12年、テキサスに6年住み、どちらもメキシコと国境を接している州なので、メキシコの「近さ」を肌で感じてきたものである。特に今住んでいるダラスは、1994年に発効した北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement: NAFTA)によって活性化したカナダ・米国・メキシコ間の物流の「扇の要」に位置していて、米国の政治・経済・社会にとってのメキシコの重要性を最も強く感じることができる都市である。

 筆者が所属するサザンメソジスト大学タワーセンター政治学研究所でもメキシコに関する講演やセミナーが頻繁に開かれていて、貿易、移民、エネルギーなどの問題で活発な議論が行われている。その一環として、先月24日にメキシコの与党、制度的革命党(Partido Revolucionario Institutional: PRI)の有力国会議員、ハヴィエル・トレヴィーニョ(Javier Trevino)氏がタワーセンターを訪れ、「メキシコのエネルギー改革:意義と展望」(Mexican Energy Reform: Insights & Perspectives)と題する講演を行った。その折、トレヴィーニョ議員にインタビューする機会があったので、メキシコの政治情勢、NAFTAをはじめとする米国との関係、環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific Partnership: TPP)への取り組み、日本との関係などを、メキシコのエネルギー改革と絡めながら語ってもらった。今回は米国におけるメキシコ事情を報告する。

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