昨年十月に二度目の有人宇宙飛行船「神舟六号」の飛行を成功させた中国が、翌十一月にさっそく、南米ベネズエラへの衛星売却を決めた。衛星ビジネスの拡大を目指す中国がターゲットにするのは、ベネズエラのような反米国など、米国の勢力が及びにくい国々だ。衛星を提供する見返りとしてエネルギー権益の買収を認めるように持ちかける動きもあり、「宇宙」を新たな外交カードに活用し始めている。 今回売却されるのは、設計から製造、打ち上げまでを国有企業の中国長城工業が手がける通信用の衛星。ベネズエラのチャベス大統領は契約調印式で「通信衛星を持つことで西側の独占と封鎖を打破し、自主的に通信やテレビ事業を発展させられるようになる。これは国の独立と主権の維持に役立つ」と述べた。衛星を中国から購入する理由はコストが安いからだけでなく、米国など西側諸国と対抗する狙いも含まれていることを強調して見せたのだ。 中国は近く、ナイジェリアにも衛星を売却する方針を示している。ナイジェリアはベネズエラと同様に大産油国だ。衛星売却の見返りとして、同国内の油田、天然ガス田開発で中国企業の参画について便宜を図ってもらう水面下の確約があるともいわれている。このケースからもやはり、衛星ビジネスのシェア拡大を通じて外交関係も深め、エネルギー資源の確保に繋げるという、中国の強かな戦略が透けて見える。

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