北欧フィンランドで六基目となる原子炉の新設論議が二〇〇六年には本格化しそうだ。〇五年九月、ボスニア湾に面した西海岸側のオルキルオト島で五基目となる原子炉が着工されたばかりだが、財界が中心となり、さらなる増設に向けて政府へのロビー活動が始まっている。 フィンランドの原発は、紙パルプ世界大手のストラ・エンソなど大口需要家が中心となって出資する電力会社TVOが推進してきた。一九八〇年前後に二基の原発をオルキルオト島に建設。現在建設中の「オルキルオト三号基」(国内で五基目)は〇九年に稼働、一基で同国の電力需要の約一割を賄うことになる。ただ、フィンランド経団連(CFI)など財界側は〇五年末から「六号基の建設を早急に進めるべきだ」との方針を表明。政府も検討を始める構えだ。 〇二年に脱原子力の方針を決めたドイツを始め、反原発の意識が根強い欧州で、なぜフィンランドは積極的に原発建設を推進できるのか。最大の要因は国民のエネルギー安全保障に対する意識だ。ある政府高官は「(歴史的に長年抑圧された)ロシアの天然ガスに依存することへの恐れがあり、原発こそ唯一の解決策との思いが強い」という。 原子炉新設はTVOが主導する「民間活力」型をとる。三十億ユーロが必要なオルキルオト三号基でも政府の補助金に頼っていない。TVOは新原発からの余剰電力分を電力価格が割高なスウェーデンなど周辺国への輸出に振り向け、建設費を早期回収しようと狙っている。

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