パレスチナとイスラエルが抱える「ハマスの難題」

執筆者:ガーション・バスキン2006年3月号

イランやアラブ諸国のオイルマネーの後ろ盾を得そうなハマスに、欧米がかけることのできる圧力はしれたものだとすれば――[エルサレム発]一月のパレスチナ評議会選挙で、イスラム原理主義組織ハマスが半数を超える七十四議席(総議席数百三十二)を獲得した。しかし、ハマス主導のパレスチナ自治政府ができるのか、あるいはハマスが主流派ファタハや無所属議員を巻き込んで連立政権を作るのか、自治政府大統領にあたるアッバス議長は外交や軍事に関する権限を新首相に譲るのかなど、数多の疑問に答はなく、先行きは不透明だ。二月はじめの時点では、ファタハも無所属系代表のサラム・ファイヤド元財務相もハマスと連立を組む意向はない。何よりハマス自体、ガザ、ヨルダン川西岸、亡命先のシリア・ダマスカスなど各地の勢力が集まって内部調整を始めたばかりなのだ。 こうした現状では、アメリカもEU(欧州連合)も、パレスチナ自治政府との接触には慎重な姿勢をとり続けることになるだろう。 反対勢力でいた時とは違い、政権の座につけば人々の生活に対する責任も発生し、ハマスといえども現実的になってテロを放棄し、イスラエルを承認する方向に動かざるを得ないだろうと予測する向きがある。さもなければ、欧米からの資金援助が途絶えてしまうからだ。

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