ウクライナ情勢は、ロシアの大規模軍事侵攻の恐れが完全に遠のいたわけではないものの、むしろ硬直状態に陥っている。この間も、ロシアは統制下に置いたクリミア半島で、支配の既成事実化を着々と進めている。ウクライナ本土と半島との境には検問が設けられ、3月6日から8日にかけては、欧州安保協力機構(OSCE)の監視要員が続けて入域を阻まれた。ロシア部隊と目される兵士らが境目に沿ってせっせと塹壕を掘り、「国境」づくりに精を出しているとも伝えられる。

 今回ロシアが一連の行動の名目として挙げているのは、クリミア半島で6割に達すると言われる「ロシア系住民の保護」だ。これが波紋を投げかけている。旧ソ連や旧東欧諸国の多くは、ソ連時代に移り住んできたロシア系住民を抱えている。彼らを突然、ロシアが保護すると言い出したら? そのような不安を、ロシアの今回の行動は裏付けることになった。

 特に、ロシア系が多いバルト3国で動揺が広がっているという。欧州軍事専門サイト「B2」によると、米軍は6日、バルト3国側からの要請で戦闘機6機を英国からリトアニアに移動させるなど、支援強化に乗り出した。バルト3国は防空体制が極めて弱く、リトアニア国防省は「ウクライナ情勢に対応した動き」と説明しているという。

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