鉄鋼世界最大手のミタル・スチール(オランダ)が同二位のアルセロール(ルクセンブルク)に対しTOB(株式公開買い付け)を仕掛けている。 ミタルの狙いは、高級鋼板に強いアルセロールを傘下に収め、利幅の大きい自動車向けなどの売上を伸ばすことだとみられる。TOBが成功すれば世界三位の新日鉄の三倍の粗鋼生産量(年間一億トン)を誇るガリバーが生まれ、「価格の主導権のほか、主要な販路も握られてしまう」と、国内鉄鋼大手も危機感を募らせる。 ただ、アルセロールが本拠を置くルクセンブルクの政府や、同社の従業員を国内に二万七千人も抱える仏政府がミタルの動きを強く牽制しており、TOBが順調に進むとは考えにくい。そこで注目されているのが、「(アルセロール買収に失敗すれば)ミタルの矛先は間違いなく日本の鉄鋼会社に向かう」(大手投資銀行関係者)というシナリオだ。 ミタルが提示している買収総額(二兆六千億円)を、アルセロールと戦略提携を結んでいる新日鉄(時価総額三兆円弱)に注ぎ込む気になれば、株式の過半取得は十分可能。新日鉄に限らず国内鉄鋼メーカーは各社とも「ミタルの動きには相当神経を尖らせている」(国内鉄鋼大手幹部)。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。