知らないうちにあなたは“顔の見える消費者”にされている。ネット検索や購買の履歴によって、どんどん個別広告が届くようになるのだ。 進化し続けるインターネットの世界で、消費に関する主導権の主客逆転が起ころうとしている。それはインターネットの進化形として姿を見せつつある「Web2.0」という概念が、初めて経済的な意味を持ち始めたということでもある。新たなメディアとして存在感を強めつつあるインターネットの基本的な収入源もやはり広告だ。しかし、その広告手法はテレビ、新聞、雑誌、ラジオなどの既存のメディアとは一味違う。 ネット広告の市場規模は、二〇〇四年にはラジオを抜いて雑誌に迫り、今年は六兆円の広告市場の六%を占めると予想されている。広告主側にも「ネット広告を活用すれば、不特定多数を相手にしていたこれまでの広告よりも、ダイレクトメール(DM)的な無駄のないPRを行なえるのではないか」(大手自動車メーカー幹部)という認識が広がりつつある。こうした動きに対応するため、広告会社の電通は昨年二月、従来のテレビ、新聞のみならずパソコンや携帯電話など複数のメディアをまたいだ広告市場開発を行なう、クロスメディア部を新設した。後述するように、ネット広告には企業の商品広告費のみならず、その二倍もの規模を持つ販売促進費、さらに十倍以上の規模を持つ個人向け物販市場からも金が流れ込み始めている。

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