プラントエンジニアリングの取材を始めたころ、ある技術者から、「家族四人分の料理であれば主婦はなんなく作るだろう。だが、五〇人分となると、キッチンが広くても一度に作ることはできない」と聞かされた。巨大なプラント建設に計画段階からかかわり、設計して納期までに完工させるには、独自のノウハウがあるということの例えなのだが、それが、どのようなものであるのかは理解できなかった。 エンジニアリング最大手の日揮や千代田化工建設(千代田化工)を何度か訪ねるうちに、あることに気がついた。あえて英語で記せば「ドキュメント」である。取材に応じてくれるどの技術者も、実にまめに資料を用意してくれるのだ。なかには分厚い英語の論文集をプレゼントしてくれた人もいる。 今回もそうだった。巨大なプラントを作りあげるプロジェクトマネジメントや、自社ではものを製作せずに各社の技術を融合させる「エンジニアリング会社としての品質管理」の真髄とはどのようなものか、再度、話を聞かせてほしいと千代田化工に依頼した。技師長にあたるフェローの坂口順一と業務統括常務(CIO=最高情報責任者)の白崎善宏が対応してくれたが、二人とも忙しいなか、使い回しではない資料をわざわざ作ってくれていた。

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